『耳をすませば』ー月島雫の『カントリーロード』-ジョン・デンバー『故郷に帰りたい』

2009.11.16.06:55

つい先日、映画『耳をすませば』をもう一度じっくりと見たくなって、見てみたんです。1回目は家事をしながらだったんで、ちゃんと見ていなかったんですよ・・・。

いつまでたって新鮮さを失わない清々しい気分にさせてくれる、本当にいいアニメでした。
このDVDを買ったのは比較的最近なのですが、かなり前から『カントリー・ロード』でお馴染みと知りながら、ビデオのレンタル・ショップに行ってもこのビデオの前で考えるばかりでなぜか借りたことさえなかったのです。

だって、だってジョン・デンバーの不朽の名作『故郷へ帰りたい』を日本語版の『カントリー・ロード』に換えてヒットさせたんでしょ・・・。これは凄いことなんですよ・・・。

それに、ビデオ・ケースを見ると、聖司が窓から顔を出し、家の外壁に雫がもたれかかっていて、しかも猫のムーンが気持ちよさそうに窓辺に寝そべっているほのぼのとしたワン・シーンです。気がついたときにすぐにでも見ておけばよかったと今さらながら、ちょっぴり後悔しています。

見もしないで、つまらない作品だったら、どうしようなんて思っていたんです。これはただの杞憂にすぎませんでした・・・。

まさかこんなにも爽やかで感動的なアニメだなんて思いもよらなかったのです。

とにかく、宮崎駿さんのイマジネーションのマジックなんでしょうね~

この『耳をすませば』は柊あおい原作で少女まんが『りぼん』に4回にわたって連載されたものです。少女マンガを宮崎駿さんが始めて買い、そしてもう一度買ったときに出会ったのがこの『耳をすませば』だったのです。

宮崎さんのこの作品に対する最初の印象は『あっ、バランスのいい作品だな』ということでした。でも、バランスのいい作品は少女漫画としてはヒットしないだろうと予想したんですよね。・・・・そしてその予想通りの展開でたったの4回で打ち切りとなってしまったんです。

でも、少女漫画としてヒットしなかったけれども、アニメとしてならヒットすると考えたんですね。

宮崎 駿さんの後継者候補であった近藤 喜文さんは、『少年少女の出会い』をやりたいと思っていました。一方宮崎さんは、『さわやかな出会いもの』を作ろうと思っていました。

時は1993年、スタジオ・ジブリでは、大作『平成狸合戦ぽんぽこ』を作り、大作の後はスタッフに疲れが残っていました。宮崎はんは『あまり手間のかからず、肩のこらな』小作品をやってスタッフの気分を変えたいと思い、『安く、早く、うまい』作品第一号として近藤 喜文監督『耳をすませば』が提案されたのです。

ところがどっこい作っていくうちに構想がどんどんふくらみ、結局いつもの長編アニメドラマとなってしまいました。

原作では聖司は画家を目指しているのですが、アニメではヴァイオリン職人を目指しています。

このアニメ作りの過程で「カントリー・ロード」が何故選ばれたのかぜひとも知りたいと思いました。

その後しばらくして、この『耳をすませば』の関連のものを読んでみて、宮崎駿さんが、この作品を作る初期段階から『カントリー・ロード』(故郷へ帰りたい)を選んでいたことを知りました。

中学生にとっての『故郷とは何か?』という問いかけがあったようなんです。この『カントリー・ロード』のシーンがこの映画のメイン、一番の見どころでした。

でもね、でもね、できれば宮崎駿さんに直接会って、どうしてこの曲を選んだのですか?って聞いてみたいなぁと思うんです。私にとって宮崎駿さんは雲の上の人ですから、そう簡単にはお会いすることはできないですよね。それにちょっと気難しそうなところもあるし・・・。ちょっと難しくて、はちゃめちゃな発言は私の母にも似ているところがあります。私も母も芸術家タイプだし、年も近いので、相通ずるところがあるのかぁと、ふと思ったりもしています・・・





このドラマのオープニングで、まず始めにオリビア・ニュートン・ジョンの『カントリー・ロード』が流れます。

次に雫が親友の夕子に会い、彼女が日本語に訳した『カントリー・ロード』の訳詩を見せます。早速歌いだす、夕子・・・。

『カントリー・ロード』 (初訳) 訳詞 月島 雫

白い雲 わく丘を
まいてのぼる 坂の街
古い部屋 小さな窓
帰り待つ 老いた犬

カントリー・ロード 遥かなる 故郷へつづく道
West Virginia 母なる山
懐かしい わが街



英語の歌の訳というと、まず原文に忠実に訳すことから、始まりますが、雫の訳を見ると、なるほどこういう約し方もあるのだと、新鮮な感動の思いにかられました。

特に日本語は高低アクセントであるがゆえにその詩をすべて曲に載せるのがとても難しいのです。曲と日本語に詩を合わせることの難しさについては、有名なジャズ・ピアニストで作曲家の中村八大さんの著書『ぼく達はこの星で出会った』を読むとよくわかります。八大さんが作曲した曲と永六輔さんが作詞した長い詩がうまくかみ合わず、しばしばいい争ったそうなんです。永六輔さんは日本語の良さをよくわかっている方で、本当に短い言葉で心を打つ表現をされますが、実は中村八大さんとのコンビを通じてその言葉に対する感性が研ぎ澄まされたのだと、感じました。

話がすっかり脱線してしまいましたが、『カントリー・ロード』というアメリカのウエスト・バージニアの美しい自然を讃え、懐かしい故郷を思うこの歌が、日本の誰もがいつも見ている風景の中でこんなにも生き生きと再構成されたことに、スタジオ・ジぶりの応用力の素晴らしさ、想像力の偉大さを感じました。

雫はこの後で、こんな詩も書いたと見せてくれたのが、『コンクリート・ロード』でした。

コンクリート・ロード  作詞 月島 雫

コンクリート・ロード どこまでも 森をきり谷を埋め
West Tokyo, Mt,Tama
ふるさとは コンクリート・ロード



都会暮らしをしている雫らしい詩で、思わず笑ってしまいます。しかも、カントリーとコンクリートが絶妙な駄じゃれになっているんですよね。

こんな遊び心が今の時代には必要なんです。そんなことをふと思いました。


さて、地球屋で、聖司がバイオリンを弾き、雫が『カントリー・ロード』を歌うシーンですが、当初はこの映画の一点豪華シーンの予定でした。

最初にプロの演奏家に曲を演奏してもらい、その様子をビデオに収録し、その映像を見ながら作画のスタッフが絵を描いていく、という方式だったそうです。

このシーンに登場する楽器はヴァイオリン、ビオラ・ダ・ガンバ、リュート、コルネット、リコーダー、タンバリンの6種でした。当然のことながら、指の動きも違い、それらを正確にトレースするのが、予想以上に大変でした。特に、ヴァイオリンの形を一定にするのは至難の業だったそうです。

ビデオに撮ってそれをもとにアニメにしていく工程は初期のディズニー・アニメを彷彿させるところがありますね。もちろん今でもこの方式を継承していると思いますが・・・。

結局、このシーンを作るためにかかった時間は半年、30分のアニメに匹敵する、約3000枚の動画が描かれることになりました。このシーンはわずか5分足らずなのですが、見ているだけで涙がこぼれるくらい素晴らしい出来栄えです。

その歌詞はこちらです。

『カントリーロード』・・・『耳をすませば』より 

★カントリーロード この道 ずっとゆけば
あの街に つづいてる
きがする カントリーロード」

ひとりぼっち おそれずに
生きようと 夢みてた
さみしさ 押し込めて
強い自分を守っていこう

★リフレイン

歩き疲れ たたずむと
浮かんで来る 故郷の街
丘をまく 坂の道
そんな僕を 叱っている

★リフレイン

どんな挫けそうな時だって
決して 涙は見せないで
心なしか 歩調が速くなっていく
思い出 消すため

カントリーロード
この道 故郷へつづいても
僕は 行かないさ
行けない カントリーロード
カントリーロード
明日は いつもの僕さ
帰りたい 帰れない
さよなら カントリーロード



ちなみにこの「耳をすませば」の監督を務めたのが近藤喜文さんで『巨人の星』、『ルパン三世』、『未来少年コナン』、 『赤毛のアン』、『魔女の宅急便』等様々なアニメの作画をした天才アニメーターでした。

1995年にこの『耳をすませば』が上映されましたが、その3年後の1998年に近藤さんは47歳の若さで亡くなってしまったのです。葬儀の出棺時には『耳をすませば』の『カントリー・ロード』が流されたそうです。

近藤さんは誰もが納得する天才アニメーターでしたが、体が弱いのに、泣き言も一切言わずに過酷なアニメの制作をこなし、命を縮めてしまったのかもしれません。もっと長生きして素晴らしいアニメをたくさん描いて欲しかったと切に思います。

そして近藤さんの葬儀にも『カントリー・ロード』が流されたことに何故か、涙がこぼれてしまうのでした。

今日は『耳をすませば』の中での『カントリー・ロード』の詩の部分にスポット・ライトを当ててみました!

こちらは『耳をすませば』の『カントリー・ロード』です。感動します☆
http://www.youtube.com/watch?v=L7cykjvn7SU

カントリーロード 耳をすませばより shonai clarinet ensemble





ジョン・デンバーと共にこの『故郷へ帰りたい』を作った、ビル&タフィー・ダノフと一緒に歌っています。この映像は1970年代にイギリスのBBC放送で6回シリーズとして放映されたもののワンシーンです。こういった画面の粗いものしかないのですが、ぜひともきちんとしたDVDとして公式に発売していただきたいと思っています。


オリビア・ニュートン・ジョンの歌う『カントリー・ロード』です!
http://www.youtube.com/watch?v=geB6pudWpBA




【関連記事】
「カントリー・ロード」(故郷へ帰りたい)誕生秘話~ジョン・デンバー 第13回目の10月12日メモリアルデーによせて



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tag : ジョン・デンバー 耳をすませば

comment

Secret

No title

2009.11.16.18:46

ジブリ、大好きです! 
若い頃のオリビアもイイっすね。

でも、やっぱり、本家が一番!
本人も心なしか、カントリー風に歌ってるし。
フィドルをもっと強調して、エミール・ハリスあたりにコーラスやらしたら
きっと鳥肌ものでしょうね・・・あくまで私見ですが。

おもわず、ギターを抱えちゃいましたゼ!
私のギターは、どうしてもpunkになってしまうところが「涙」カモ・・・

No title

2009.11.16.20:03

私が今まで聞いたカントリー・ロードの中で、最も原曲の歌詞にあった歌い方をしているのが、ジョン、ビル、タフィーの3人で歌われた真中の映像です。素晴らしいの一言に尽きます。あたかも、3人が交通事故の後のビルの家で、よってたかって、何とか作りかけの曲を仕上げ、その出来たばかりの歌を歌っているような雰囲気がありますね。
 この歌も聞くところによると、最初は2番はヒッピーの住処を歌ったものだったそうですが、ジョンの考えで今の歌詞に変わったそうです。大正解でしたね。歌のイメージが全く変わってしまいましたもの。私は英語版のこの歌が好きです。日本語のものも素晴らしいのですが、英語の歌詞と曲がこんなにマッチし、しかもウエスト・バージニアの自然、人々の暮らし、懐かしい気持ち、心のひだに触れるような、なんともいえない印象、それらは英語と曲がマッチしているから生まれるものです。
 私個人としては、正直あまり日本語のカントリー・ロードは受け入れられないのです。それは英語のものがあまりにも素晴らしすぎるからです。そんな意味では、オリビアのバージョンも「本物ではない」という印象があります。
 ジョン、タフィー、ビルの3人が作り上げたハーモニーは、まさに音楽界の出会いの奇跡と言っても過言ではないでしょう。すばらしく出来上がりすぎたのかもしれませんね。
 しかし、「耳をすませば」のなかでのカントリー・ロードもアニメーションの内容を考えながら聞くと、素晴らしいものだと思います。
 それでも、私は真中の映像の中の3人が歌うカントリー・ロードが最高の出来で、最も原曲に忠実なものだと思っています。
 あー、一度この3人が歌うのをライブで聞いてみたかったなー!

No title

2009.11.17.00:12

そうですね・・・
この3人だからこそ、このハーモニーが生まれるのかもしれません。
崩しては、イケないのかも・・・

私は、歌いだしの歌詞が好きです。
almost heaven・・・ほとんど天国!

『カントリー・ロード』

2009.11.17.06:22

kasago様、
いろいろと読んだりとか、動画も見てくれましたか・・・。ありがとうございますv-266

>フィドルをもっと強調して、エミール・ハリスあたりにコーラスやらしたら
きっと鳥肌ものでしょうね・

エミール・ハリスって、エミルー・ハリスのことですよね?ジョン・デンバーと Wild Montana Skiesをデュエットして、結構ヒットしたんですよ!ご存知でしたか?ノリが良くて、ライブにはもってこいの奴なんですよv-218

>おもわず、ギターを抱えちゃいましたゼ!
私のギターは、どうしてもpunkになってしまうところが「涙」カモ・・・

『カントリー・ロード』にも一度挑戦してみてくださいね☆

George様、

ありがとうございます(*^_^*)

>私が今まで聞いたカントリー・ロードの中で、最も原曲の歌詞にあった歌い方をしているのが、ジョン、ビル、タフィーの3人で歌われた真中の映像です。

この映像を見ると初期のころはこんな感じでゆっくりと歌っていたなぁと思いました。時代を反映してかもしれませんが、だんだん歌うスピードがアップしていったような気がします。

最初にビルとタフィーが作った2番の歌詞がなんとも不似合いな歌詞でしたよね・・・。ジョンが手直しして、3人の知恵の結集でこの素晴らしい歌が完成したんですよね・・・。

何度聴いても楽しくなってしまう名曲だと思います♪

>私個人としては、正直あまり日本語のカントリー・ロードは受け入れられないのです。

確かに原曲が素晴らしすぎますものね・・・。ただ、今の若者たちが『カントリー・ロード』を好きになるきっかけになったのがこの『耳をすませば』なんで、この映画の影響力って本当に凄いなぁって思っています。

>あー、一度この3人が歌うのをライブで聞いてみたかったなー!

私もジョンとビルとタフィーの歌っているところを見たかったです。

ジョンが亡くなってしまった今では、もうすでに遅しですが、せめて映像を修正してでもDVD化を実現させて欲しいなぁというところが本音です☆

No title

2009.11.17.07:03

真中の映像は確かsong's best friendの中にもう少しきれいな映像で入っていたような気がします。チェックしてみますね。

No title

2009.11.18.06:49

George様、
ありがとうございますm(__)m

私もまた探してみますねv-265

No title

2009.11.18.19:03

>『カントリー・ロード』にも一度挑戦してみてくださいね☆

ありゃ・・・言わなかった?
もうすでに、バンドで演奏してますゼ!
punkアレンジだけど・・・(滝汗)

初耳!

2009.11.19.05:31

kasago様、

それは初耳ですよv-237
punkアレンジの『カントリー・ロード』って、どんな感じかしら?

演奏する人の感性でいろんな『カントリー・ロード』ができちゃうんでしょうね~v-341
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